毎日パソコンに向かうデスクワーカーにとって、避けて通れないのが「肩こり」です。マッサージに行ってもすぐ戻ってしまう……そんな悩みに対し、近年「ドライニードリング(DN)」や「トリガーポイント鍼灸」が科学的に注目されています。
今回は、信頼性の高い最新論文をもとに、その効果とメカニズムを分かりやすく解説します。
1. 日本の研究で判明:仕事の効率まで上がる?
2024年に発表された日本人を対象とした最新の研究(Kusuyama et al.)では、デスクワークに従事する女性を対象にトリガーポイント鍼灸の効果を検証しました。
• 研究内容: 週1回(計4回)の鍼灸施術を実施。
• 結果:
• 痛みのスコアが約20%減少。
• 肩の動き(関節可動域)が改善。
• 驚くべきことに、仕事の生産性低下(プレゼンティーズム)も有意に改善しました。
単に「痛みが消える」だけでなく、 「仕事に集中できるようになる」ことが科学的に示唆されたのです。
2. なぜ「ドライニードリング」が選ばれるのか
欧米を中心に普及しているドライニードリング(薬液を使わない鍼治療)についても、多くのメタ分析(複数の研究を統合した分析)が行われています。
短期間での劇的な改善
2020年の系統的レビューでは、頸部(首)や肩のトリガーポイントに対するドライニードリングは、「偽の治療(プラセボ)」や「何も治療しない場合」よりも明らかに痛みを軽減すると結論付けられています。
特に、鍼を刺した瞬間に筋肉がピクッと動く「局所収縮反応(LTR)」が起こると、筋肉内の化学物質がリセットされ、痛みの物質が減少することが分かっています。
3. なぜ効く? 3つのメカニズム
論文で指摘されている、鍼が肩こりに効く理由は主に3つです。
1. 血流の「強制再起動」:
凝り固まって血流が途絶えた部分に鍼を刺すと、血管拡張物質(CGRPなど)が放出され、一気に血流が改善します。
2. 脳への信号ブロック:
鍼の刺激が脳に伝わる過程で、痛みの信号をブロックする「ゲートコントロール」という仕組みが働きます。
3. 筋肉の物理的リラックス:
持続的に収縮してしまっている筋線維(タウトバンド)を物理的に刺激し、弛緩させます。
4. 結論:デスクワーク肩こりの新常識
研究データから言えることは、「慢性的な肩こりには、表面的なマッサージよりも、深部のトリガーポイントを直接刺激する鍼治療の方が効率的である可能性が高い」ということです。
ただし、論文でも強調されているのが「セルフケアとの併用」です。
• 鍼で痛みのリセットを行う
• ストレッチや姿勢改善で再発を防ぐ
この両輪が、科学的に最も推奨される「肩こり脱出ルート」と言えるでしょう。
編集後記
「ただの肩こり」と放置せず、エビデンスに基づいたアプローチを取り入れることで、日々のパフォーマンスは劇的に変わります。長年の重だるさに悩んでいる方は、一度専門の鍼灸院で「トリガーポイント」のチェックを受けてみてはいかがでしょうか。
ブログ掲載用の補足:
この記事は以下の研究報告等を参考に構成しています。
• Kusuyama, T., et al. (2024). Effect of Trigger Point Acupuncture on Neck and Shoulder Pain and Work Productivity.
• Gattie, E., et al. (2017). The Effectiveness of Dry Needling and Manual Therapy in Patients with Musculoskeletal Conditions: A Systematic Review.
