コラム【坐骨神経痛とトリガーポイント】

坐骨神経痛は、腰からお尻、太もも、ふくらはぎにかけて広がるしびれや痛みが特徴で、多くは椎間板ヘルニアや梨状筋症候群などに起因します。こうした神経痛に対して、薬や牽引療法だけでなく、筋肉への直接的なアプローチとして注目されているのが「ドライニードリング(トリガーポイント鍼灸)」です。

ドライニードリングとは、筋肉にできたトリガーポイントと呼ばれる過敏なコリに対し、専用の鍼を刺して血流や神経伝達を改善し、痛みやこわばりを軽減する施術法です。特に、神経の圧迫を引き起こす筋緊張の緩和には大きな効果が期待されています。

1. 坐骨神経痛に対するドライニードリングの効果

坐骨神経痛は、腰部から臀部、太もも、ふくらはぎにかけて放散する痛みが特徴で、主に坐骨神経の圧迫や刺激によって引き起こされます。ドライニードリングは、筋肉のトリガーポイントに直接アプローチすることで、筋緊張の緩和や神経の興奮を抑制し、痛みの軽減を図る治療法です。

2. 関連する研究結果と引用元

a. 慢性腰痛患者におけるドライニードリングの効果

あるランダム化比較試験では、慢性腰痛患者を対象に、ドライニードリングを週2回、4週間実施したところ、痛みの強度が有意に減少し、機能的な改善も認められました。この研究では、ドライニードリング群が対照群と比較して、痛みの軽減や機能の向上において優れた効果を示しました。

b. ピリフォームス症候群に対するドライニードリングの有効性

ピリフォームス症候群は、梨状筋が坐骨神経を圧迫することで、坐骨神経痛様の症状を引き起こす状態です。この症状に対しても、ドライニードリングが有効であることが報告されています。ある研究では、ドライニードリングを施術した患者群で、痛みの軽減や機能の改善が認められました。

3. まとめ

現在の研究結果から、ドライニードリングは坐骨神経痛や関連する症状に対して有効な治療法である可能性が示されています。特に、筋肉のトリガーポイントに起因する痛みに対して効果的であり、薬物療法や手術に代わる非侵襲的な選択肢として注目されています。ただし、個々の症状や状態に応じて適切な治療法を選択することが重要であり、専門家と相談の上、治療計画を立てることをお勧めします。

実際に、2022年に発表されたランダム化比較試験では、慢性腰痛患者にドライニードリングを4週間施術した結果、痛みの強度および身体機能が有意に改善したと報告されています。これは坐骨神経痛における神経圧迫の軽減にもつながる重要な所見です(Scientific Reports, 2022年、https://www.nature.com/articles/s41598-022-19980-1)。

また、2023年に行われた研究では、梨状筋症候群(ピリフォームス症候群)の患者に対し、超音波ガイド下でのドライニードリングを行ったところ、痛みの軽減と歩行機能の改善が報告されました。これは坐骨神経を圧迫する原因のひとつである梨状筋への治療が、直接的に症状の改善につながることを示しています(Cureus, 2023年、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10508642/)。

このように、坐骨神経痛に関与する筋肉の異常緊張に対して、ドライニードリングはエビデンスに基づいた有効な選択肢として位置づけられています。薬に頼らず、神経そのものではなく原因筋への直接アプローチを希望する方には、試す価値のある施術法と言えるでしょう。



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